『大学と研究機関のための知的財産教本』
辻本 一義、他5名 (著)
山口大学知的財産本部(監修)
定価: 2,700 円(税込)
発刊日: 2004/6/30
単行本: 322ページ
発行: EMEパブリッシング
特許を中心とした幅広い知的財産権について、内容ごとに見開き1ページで完結させた書籍、技術者必携の一冊
【内容紹介】
本書は、山口大学知的財産本部の監修のもと、著名な弁理士、審査実務経験者がまとめた一冊です。構成は、一の内容につき、見開き1ページで完結しており、どこからでも入りやすく眺めているうちに知財全体がつかめる最新版の入門書です。また、特許をはじめ意匠、商標、実用新案、著作権等の知的財産権をはじめ、トラブルに巻き込まれたときの裁判の仕方まで、知財全体を幅広く網羅し、専門家に聞く前に勉強できる一冊です。
今回の「知的財産教本 改訂版」は、最新法令カバーはもちろん、新たに付録として「大学の上手な活用方法」が加わり、更に内容が充実しました。
携帯にも便利なサイズで教員、研究者、知財実務担当者のバイブルとして、この機会に是非1冊いかがでしょうか。
【目次】
序章・・・・知的財産制度の世界の全体像
第1章・・・特許出願前の知識
第2章・・・特許出願から特許が取れるまで
第3章・・・特許がとれた後
第4章・・・実用新案制度
第5章・・・意匠制度
第6章・・・商標制度
第7章・・・外国とのつき合い
第8章・・・不正な競争行為と著作権
第9章・・・紛争の対応(警告、交渉、訴訟)
第10章・・・特許事務所(弁理士)とのつき合い
付録・・・大学の上手な活用方法
監修者の挨拶
平成16年に初版を発行して早2年が経ち、多くの読者の方々に読んでいただきました。中には、教科書として使って下さった大学もありました。誌面をお借りし、衷心より厚く御礼申し上げます。
この2年の間に、法律(特許法、実用新案法、意匠法商標法、不正競争防止法等)は、大きいところ細かいところいろいろと改正がなされました。そこで、これらに対応するため、このたび内容を全面的に改めることに致しました。また、国立大学の法人化以降に進められてきた産学連携も、多くの大学で少しずつ定着してきた感があります。そこでこの機会に、これらに関する話題も数多く盛り込みました。
私事ではありますが、山口大学に着任後、知財授業、セミナー等で多くの大学や企業を訪問する機会がありました。知的財産基本法が設立後、国をあげての知財推進の機運は確かに高まってきたものの、知財に対する意識や知識の格差が、大学間、企業間、個人間で、逆に大きくなっているのではないかということを、現場で強く感じているところです。この格差解消に、この本が少しでも役に立ちますことを期待しております。
初版を出版するに至った時の気持ちは、今もいささかも変わっておりません。
当時の挨拶文を再度、以下に掲載させていただき、御挨拶とさせていただきます。
「平成14年、知識経済と新たな環境の下で、「イノベーションを生み出し、それらを経済活動の推進力としていくためには、その成果を知的財産として適切に保護し、それを有効に活用することが必要である」との基本理念が、知的財産立国を目指す知的財産基本法という立法の形で表明されました。この中で、大学や研究機関は、知的創造の担い手として研究活動を通して独創的かつ革新的な研究成果を生み出し、それを積極的に社会に還元する知的財産の源流に位置づけられ、大いに期待されています。そしてこれらを受けて、大学においては、大学知的財産本部整備事業が開始され、その支援の一環として、私は特許庁から山口大学の知的財産本部へ派遣されることとなりました。
これまで大学等における研究成果の社会還元の手段としては、論文による公表が主であり、その成果を知的財産として管理・活用するという習慣は、一部の先生を除いてほとんど無かったと言っていいでしょう。企業の研究開発体制から見ると、恐らく大学の知財に関しては数十年の後を追っているようです。
そこで私は着任後、まず先生方を始めとする大学職員への知財の普及啓蒙の必要性を感じ、すぐさま取り組もうとしました。ところが、そのための適切なテキストが極めて少ないことが判明しました。知財の専門実務家を養成するための専門書はそれなりに揃っていますが、研究者のような法律に縁遠い人が優しく学ぶことができる本が見あたらなかったのです。それならば自前で作ろうと、知財の専門家である弁理士・弁護士各位6名にお願いし、それと当大学から3名の教授の計9名で、当該テキスト制作プロジェクトを立ち上げたのです。
知的財産法は、研究者や技術者にとって、とっつきにくいものであることは確かです。学習のコツとしては、まず全体を把握してから個別の問題に入っていくほうが理解が早いようです。そのために本書は、研究現場で必要と思われる知識を全て網羅し、内容ごとに全て見開き1頁で完結させているため、どこからでも入りやすくなっており、しかも眺めているうちに知財全体が自然と掴めるようになっていますので、入門書としては最適な構成をとっています。
知的財産法は、別名、研究者・技術者支援法とも言われており、皆様方の権利を守ってくれる制度です。自分の味方になってくれる法律ですので、これを機会に是非活用されることをお勧めいたします。
平成18年11月吉日
山口大学教授 知的財産本部部長 佐田洋一郎